「至急、この口座に振り込んでほしい」—— 取引先や自社の社長・役員になりすました相手が、 LINEのメッセージやグループを使って送金を指示する詐欺が、 中小企業を中心に増えています。 海外で以前から問題になっている「ビジネスメール詐欺(BEC)」のLINE版ともいえる手口で、 経営者本人はもちろん、経理・総務担当者が指示を受ける側として狙われます。 典型的な手口の流れ、本物の連絡と見分けるポイント、 振り込んでしまった・怪しいと感じたときの対処法、 社内で備えておくべきことを中立的に整理しました。
どんな手口か(典型的な流れ)
- 社長や役員の名前・写真を勝手に使った偽のLINEアカウントから、 担当者に直接メッセージが届く
- 「今、電話に出られない」「取引先との交渉中で他の人には言わないでほしい」など、本人確認をしにくい理由が添えられる
- 「至急」「今日中に」など強い時間の圧力をかけながら、 指定した口座への振込を指示される
- 既存のLINEグループに本物の社長になりすましたアカウントが追加され、 グループ全体に振込を指示するケースもある
普段やり取りしている本物のLINEアカウントを乗っ取られるケースだけでなく、アイコン画像や表示名だけを似せた「なりすましアカウント」を新規に作るケースもあり、 見た目だけでは本物と区別しにくいのが特徴です。
本物の連絡と見分けるポイント
- ①「他の人に確認しないで」と言われたら要注意
正当な業務連絡であれば、他の担当者や上司に確認されて困ることはありません。 「内密に」「一人で対応して」という指示は、詐欺の典型的なパターンです - ②普段と違う口座名義を指定してくる
いつも振込先にしている取引先の口座と名義や銀行が違う場合は、 特に慎重に確認しましょう - ③LINEだけで完結させようとする
金額の大きい振込を、電話や対面での確認なしにLINEのやり取りだけで 進めようとする場合は要注意です - ④普段の言葉づかいや連絡手段と違う
いつもは電話で済ませる相手が急にLINEで、しかも普段と違う文体で 連絡してきた場合は、なりすましを疑うサインになります
振り込む前に、必ず「別の手段」で本人確認を
振込の指示を受けたら、そのLINEの返信では確認せず、 あらかじめ登録してある電話番号にかける、 社内の別の担当者に相談するなど、指示を受けたのとは別の手段で本人に直接確認してください。 「至急」と言われるほど、一度立ち止まって確認することが大切です。 本物の社長・役員であれば、確認の連絡をして怒られることはまずありません。
振り込んでしまった・怪しいと感じたときの対処
- すぐに振込先の金融機関に連絡し、「振り込め詐欺救済法」に基づく口座凍結の手続きができないか相談する (早いほど資金が引き出される前に止められる可能性が高まります)
- 警察(最寄りの警察署または相談専用電話「#9110」)に相談・被害届を出す
- 会社の代表者や取引先本人に、別の連絡手段で速やかに事実確認を取る
- なりすましに使われたLINEアカウントは、LINE側に通報し、周囲にも注意喚起をしておく
「自分の確認不足だった」と一人で抱え込まず、 気づいた時点ですぐに周囲や専門機関に相談することが、 被害の拡大を防ぐ一番の近道です。
会社として日頃からできる備え
経理担当者一人の注意力に頼るのではなく、会社としての仕組みで防ぐ発想が重要です。
- 一定額以上の振込は「複数人での承認」を必須にする
金額の大きい振込は、担当者一人の判断で完結させず、 上長の承認や複数人でのダブルチェックを社内ルールとして明文化しておく - 振込指示は電話確認を必須にする
LINEやメールだけの指示では実行しない、あらかじめ登録済みの電話番号への確認を必ず挟むルールを徹底する - 取引先の正式な口座情報を書面や社内システムで一元管理する
「口座が変わった」という連絡自体を、別の手段で裏取りしてから更新する運用にしておく - 「至急」「内密に」が出たら止まる、をルール化する
個人の判断に任せず、そうした言葉が出た時点で必ず上長に報告するフローを あらかじめ社内で共有しておく
まとめ|「至急」「内密に」は立ち止まるサイン
- 社長・役員になりすましたLINEでの振込指示が増えている
- 「他の人に確認しないで」「至急」は詐欺の典型的なパターン
- 振込前に別の手段(電話・対面)で必ず本人確認をする
- 振り込んでしまったらすぐに金融機関と警察に連絡する
相談先
振込先の金融機関、警察相談専用電話「#9110」、 最寄りの消費生活センター(局番なし「188」)に相談できます。 少しでも「おかしい」と感じたら、振り込む前に必ず確認しましょう。